二種類の自信。人は自信に操られる。
私はエルキュール・ポアロ。おそらく世界一の探偵です。
──── 映画『オリエント急行殺人事件』
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人の持つ自信には二種類あると思います。健全な自信と、邪悪な自信です。 健全な自信とは、 人の役に立ったり、努力して良い結果を出したり、仲間と共に何かをやり遂げたりして得られる自信です。それらによって人に褒められる事も自信となるでしょう。 邪悪な自信とは、 いじめ・暴力などの犯罪や、人を騙し操り蹴落とすなど道理に反する行いの結果得られる自信です。悪い事をしたのに庇ってもらえたということすら自信としていくでしょう。 信じがたいことに、酷い事をして自信を得ていくタイプの人間も存在するのです。そしてそこには必ず、酷い事をして優越感を感じるという異常性が存在します。 自信というのは人に魅力と信頼を感じさせるものです。しかし人は、他人のその魅力がどちらの自信から発せられているのかを、ほとんどの場合見抜けません。 邪悪なタイプの人間の成功体験は、その邪悪さと魅力・信頼感を増していきます。 邪悪な親からの過度な肯定と溺愛、それが出発点かもしれませんが、なんにしても最初は、ちょっとした嫌がらせやイジメ等の“成功体験”を重ねていきます。 人と協力して何かを成し遂げた時、普通は「自分にもやれば出来る」「人とうまくやれた」という自信が付きます。しかし邪悪な人間は集団イジメ等により、「自分にもやれば出来る」そして「人をうまく操れた」という自信を付けていくのです。 そして、その自信から来る雰囲気や行動力により人に好かれやすくなり、それによって普通の成功体験も重ねていくので、本来の邪悪さを覆うように普通の自信から来る雰囲気も表面にまとっていきます。そうして、より好かれやすくなり成功も収めやすくなる。 しかしそれとは正反対に、邪悪な人間が自信を付ける為に犠牲となった人達は、自信を無くし、人から魅力と信頼を感じてもらいにくくなっていき、思い通りの人生を生きにくくなってしまいます。 その結果、邪悪な人間達が地域社会で影響力を持ちやすくなり、本来やさしく人や社会に良い影響を与えられるはずの人達が社会に埋もれていく。もっと言えば、子孫を残しにくくもなるでしょう。 地位や財産を持った邪悪の子供・子孫が増え続けるという、完全な負のループが出来上がります。 ゆっくりとした、社会の劣化です。 邪悪な人間は、共通の敵を作る事や大勢で一人の人間をいじめるという方法で、周りの人間に歪んだ仲間意識を植え付けていきます。 二者間で対立が起こっているときなども、主張などは関係なくどちらかの味方をし寄り添うフリをすれば、それも歪んだ仲間意識を植え付け自分のコントロール下に置く機会とします。そうして、対人コントロールスキルをどんどん高めていくのです。 私達人間はほとんどの場合、人の自信の源を見抜けないから、魅力と信頼感を増していく邪悪な人間に影響を受けやすくなります。 標的となり酷い事をされた犠牲者だけがその正体を見抜く事になるのですが、周りの人間はすでに邪悪な人間の自信と魅力にはまっているので、誰も犠牲者の訴えを聞かないし、それどころか鬱陶しがられ、完全に排除されるか歪んだ仲間意識の維持の為に使われ続けます。 標的にならなくても邪悪な人間を見抜ける人は数は少ないですがいます。しかしそういう人も、やはり標的にされてしまいます。邪悪な人間は鋭く、自分のコントロール出来ない人間の排除にも動くからです。 そうして出世した邪悪な人間は、自分と同じタイプか邪悪を見抜けない人間の中でコントロールしやすい人間を出世させ、周りを固めていきます。制御出来る範囲を広げていくのです。 そして人生がうまくいく中で、人生に成功しているから自分は正しく善なのだという思い込みを持っていくのです。 人は影響を受けやすい生き物です。 まともな人間だけが持っている機能、邪悪に堕ちていくのを抑制し社会を健全に保つ為に必要な感情である「罪悪感」を鬱陶しがり、それを捨て去っていく人間が多く出て来て、どんどん邪悪な傾向を帯びた人達が増えていくのです。 そして、それがもし政治的な影響力を持つ巨大カルト宗教などが組織だって行ったとしたら？ 加速度的に社会は酷くなっていくでしょう。 邪悪な人間達は、社会の劣化がいずれ自分達をも飲み込んでいき、不幸になる確率が上がっていくという事に気が付かないのでしょうか？ 人の自信には二種類ある、ということを知っているだけでも、邪悪な人間を見抜きやすくなるかもしれません。見抜く人が多くなれば影響力を持つことは難しくなっていくでしょうから。 あなたの持つ罪悪感は、あなたと社会を邪悪へと変容させない為の大切な感情です。その感情の訴えにどうか従ってください。 この社会はまだ善人が多くを占めています。しかし、その人達が少数の邪悪に操られたら？ 邪悪の影響を受けた人達が増え、社会の質はどんどん劣化していき生きにくくなっていくだけでしょう。 見えないカースト制度が作られていき、それが蔓延るだけだと思います。 邪悪を見抜き、対抗し、健全な自信を持つ人達が動かす社会を作っていく。それが伴ってはじめて、人は本当の意味で善良な人間になれるのだと私は思います。二種類の自信。
邪悪な人間と社会の劣化。
影響力はどんどん広がっていく。
自信を持ち評価されているリーダーや高い役職に就いている人間が道理に反した事をし、それが見逃され庇われいい思いをするのを見れば、それを不満に思い真似する人達が大勢出てくるようになる。そしてそういう所には不正が蔓延り、組織や地域・社会がどんどん劣化していく。
私達に何が出来るのか。
悪に気付かないのも悪、なのですから。
